最近よく耳にする「CBD」。その正体、そして最新の研究事例とは?〜日本初CBDスタートアップに聞く!CBD最新トレンド〈CBDAYS MOMENT〉×〈柴田陽子事務所〉〜

大企業の事業改革や新規事業創出をミッションとする組織に特化して虎ノ門ヒルズに設立されたインキュベーションセンター〈ARCH虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター〉と、虎ノ門ヒルズに店舗を構える書店〈SPBS TORANOMON〉が、CBDに関する勉強会を4月に開催しました。〈CBDAYS MOMENT〉を運営する株式会社qolsから取締役の河野智史さん、ブランディングを担当する〈柴田陽子事務所〉から取締役副社長の中原真理さんが登壇。CBDの基礎知識や、世界におけるCBD市場の潮流と展望、ウェルネス・フェムテック領域におけるCBDの可能性などを解説しました。その内容を2回にわたりお届けします。(取材・文:CBDAYS JOURNAL編集部)

天然由来の健康成分「CBD」

河野:「CBD」とは、正式名称を「カンナビジオール」と言います。麻(ヘンプ)の種子と茎から抽出され、論文でも依存性がないと評価されている、日本への輸入も可能な合法の成分です。CBDは国際薬物条約における「麻薬」に該当しないと、WHOも評価しています。

一方で、麻の葉や花、根から抽出される「THC(正式名称:テトラヒドロカンナビノール)」は幻覚作用をもたらしたり、依存したりする可能性もある成分で、こちらは日本では違法な成分です。私たち〈CBDAYS〉では、アメリカに麻の提携農場・研究所を持っており、研究所で抽出したCBDのみを直接輸入しています。

また、輸入の際は、違法成分であるTHCが含まれていないことを確認する検査を、輸出前と輸入後の2回、第三者機関・国内の製薬会社と提携して行なっており、安心・安全な原料を使用して商品開発をしております。

【図表1】

CBDが作用する「ECS」とは?

河野:実は日本でCBD自体は、医薬品ではなくあくまで「食品」として輸入されています。そのため法律により、CBDの効果・効能は広告などでお伝えすることができないのですが、一般的に論文などでは「エンド・カンナビノイドシステム(ECS)」に働きかける作用が明らかになっています。

ECSは人の体にもともと備わっている調節機能で、食欲や免疫調整、運動機能、感情制御など、私たちの心身の健康を保つためのさまざまな機能に関わっています。この機能は老化やストレスによって低下し、さまざまな疾患や心身の不調につながってしまうと言われています。

【図表2】

河野:そこで、CBDの出番。CBDは「植物性カンナビノイド」と呼ばれ、体の外からカンナビノイドを摂取することで、ECSに働きかけ、身体調整機能を正常化すると言われています。麻に含まれるカンナビノイドは少なくとも113種以上あるという研究もあり、効果も相当数あるのではと期待されています。

そのほか、炎症やアレルギーなどに対してCBDがもたらす効果については、いま世界中で盛んに研究が行われているところです。世界で最も使用されている医学・生物学の学術データベース「MEDLINE」にはCBDに関する論文が1,000以上あり、そのうち動物やヒトでの臨床試験を実施しているものは約100疾患にものぼります(図表3)。例えばがんの症状に伴う痛みや、パーキンソン病(脳の異常により動作に支障が起きる神経系の難病)、妊娠時のつわり、うつ病、アルツハイマー型認知症などにおけるCBDの効果について、すでに論文が発表され、高い評価を受けているものもあります。

【図表3】

河野:個人的にはCBDには西洋医学と東洋の漢方の中間のようなイメージがあって、即効性もありながら、植物由来で副作用も少ないと言われており、ヘルシーに体の機能を整えてくれるところが良いなと思っています。

中原:私は3年前ぐらいからCBDを使い始めたのですが、睡眠の質がガラッと変わって驚きました。アプリで睡眠を計測しているのですが、CBDを摂取した日は、睡眠時間が短くても翌朝スッキリ、元気に起きられるのを実感しました。仕事中の気持ちの切り替えにも使っています。

もう一つ大きく効果を感じたのが、生理期間です。私は生理痛が重くて、生理前もPMS(月経前症候群)でメンタルが不安定になりがちですが、CBDを使うことによってそれらが緩和されたような感覚がありました。仕事や家事、育児など忙しい女性の皆さんにとって、CBDは一つのレスキューになってくれると思います。

日本の法規制の現況

河野:ここからは、麻に関する日本の法制度についてご説明していきます。先ほどもお話しした通り、日本ではCBDはあくまで食品として扱われています。私たちがCBDを輸入する際には関東信越厚生局麻薬取締部(通称:麻取)に報告書を送り、許可が出たものを輸入しています。違法成分であるTHCを微量でも含んでいる場合は原則として輸入できませんが、成熟した茎と種子から製造されたCBD製品は輸入可能です。

日本では昨年、「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が開催され、大麻取締法を見直す方向が示されました。簡単にご説明すると、現状は「大麻のどこの部位から抽出したり使用したりしているか」という点が規制の基準になっていますが、これが「THCを含むか否か」に焦点を当てた、成分基準の規制に移行していくという流れになっています。

【図表4】

河野:歴史を紐解くと、もともとの大麻取締法は戦後のGHQが策定したもので、日本の古来の麻の文化に合わせて一部の部位のみが規制されていたのですが、世界の潮流からすると逆行している状態でした。これを依存性がある違法成分THCを含むかどうかを基準とする方向に、今後見直されていくということです。また、数々の研究や海外の事例によって、大麻は医療にとって非常に有用な成分を持つという認識が広がってきていますので、医薬品として認可することも検討されています。

中原:ビジネス上、CBDについて明確に効果・効能を謳えないという難しさがあって、大手企業が参入しづらい現状があると思いますが、日本で医薬品として認可されることで大手も参入しやすくなるのでしょうか。

河野:海外では大手企業や上場企業が、大麻草の研究をしたり取り扱ったりしているという話を聞いています。日本ではまだ法規制が厳しいために、大手企業がなかなか踏み切れない状況が続いていますね。それに、あくまで私の実感ですが、日本では風潮として、「大麻」という言葉に対してすごくネガティブな印象が強いですよね。

中原:覚醒剤も大麻も十把一絡げに、薬物に対して禁忌的なマインドが根付いているので、難しいところですよね。

河野:そうですね。私たちとしても、決して大麻の解禁論者ではなく、THCの違法性を支持している訳でもないので、誤解のないようにCBDを広めていければと考えています。

【後編へ続く】